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動物病院活用術!"かかりつけ動物病院"を得るための会話

愛犬や愛猫の体調が悪いなと感じた時には、動物病院の獣医さんに相談しよう!と思いますよね。

ところが、いざ来院したら、愛犬・愛猫のことを心配し、不安になるあまり、思ったようなスムーズな診察ができなかったという話もよく聞きます。

 

獣医さんとのコミュニケーションがうまくいかないと、動物病院は居心地の悪い場所となり、なかなか愛犬や愛猫のかかりつけ医が見つからない…という悩ましい事態にもなってしまいます。

 

今回は、動物病院とうまく付き合っていくためのポイントの1つ、「会話」に関するちょっとした伝え方のコツをお話しします。

 

ー今日の目次ー

1.動物病院、どうやって選んでる?

2.動物病院の選び方で悩みがちなこと

3.獣医師・スタッフとの会話から診察は始まる!

4.愛犬・愛猫の体調が悪い時の伝え方

 

動物病院、どうやって選んでる?

動物病院で動物看護師として働いてきた時に、皆さんとのささいな世間話でよく聞いていたのは、

「かかりつけを見つけるまでが長かったわ~…」

というため息混じりの声でした。

 

実際、私自身も猫1頭の飼い主ではありますが、最初に勤務し始めた動物病院が自宅から数駅離れていたため、愛猫のかかりつけ医は近所の動物病院から探すというミッションが始まりました。

(なんせうちの子は家の外に出ると、緊張と恐怖から呼吸を荒げてパニックになるのです…外出に時間がかけられません…)

 

動物病院を選ぶ時に、注目することは一体なんでしょうか?

 

私と同じように、自宅からの距離でしょうか。…遠ければ通うのが大変です。

診察にかかる費用でしょうか。…ペット保険に入っていても、高額になればやはり治療し続けることが難しいですね。

ホームページの雰囲気でしょうか。…動物病院の第1印象は、最近ではネット検索から得ている人が圧倒的に多いです。

 

しかし、皆さんも私も、結局のところ重視していたのは、言葉は違えど

「担当医となる獣医師とのコミュニケーションがうまくいったかどうか」

という部分でした。

 

動物病院の選び方で悩みがちなこと

動物病院が自分と動物にとって居心地が(通える程度に)良く、体調が悪い時や心配事がある時に相談できるかどうかは、獣医師とうまくコミュニケーションできているかによって大きく変わってきます。

なぜなら、動物病院の「核」は獣医師であり、その動物病院が好きかどうかは獣医師による部分が大きいからです。

 

私たち動物看護師も、気持ちに寄り添って話を聞いたり、待合室や診察室が居心地の良いものになるように動物にも飼い主さんにも意識して接します。

しかし、飼い主さんにとって、「受付にいる看護師は苦手だけど、獣医師は好きだから通う」というのはあっても、「獣医さんは嫌いだけど、受付にいる看護師は好きだから通う」にはなりませんよね。

 

それは当たり前のことで、動物病院のメインの部分を担う「治療」は獣医師の担当エリアだからです。

 

愛犬や愛猫の体調を整える、もしくは、病気にならないようにするために通うのがほとんどの動物病院で、獣医師が自分や動物と合わないのに通うという選択肢はほぼありません。

 

けれども、この「自分や動物にとってぴったり合う獣医師」を見つけることが、なかなか難しいのが飼い主さんたちの悩みとも言えます。

 

獣医師とのコミュニケーションは、基本が獣医師と飼い主さんの関係とは言え、結局のところ「人と人のやり取り」です。

 

獣医師との会話の中で、

● 飼い主として、自分が希望している治療はどんなものか

● 愛犬や愛猫の体調がどう悪いのか

● 獣医師が提案してくる治療について理解し、納得できるかどうか

といったことを伝え、伝えられて、うまく会話する必要があります。


しかし、これがうまくできない時に、

「あの獣医さんとは治療について意見が合わなかった…」

「説明が足りず、いまいち理解できないまま治療が進みそうになって困った…」

といった感想を抱いてしまいがちです。

 

獣医師・スタッフとの会話から診察は始まる!

もちろん、こういったコミュニケーション方法の失敗例の中には、飼い主さんだけでなく獣医さんの言葉が足りなかったという場面もあるでしょう。

もしくは、動物看護師を始めとする病院スタッフが、飼い主さんからの言葉を獣医師にうまく伝えられていなかったという側面もあるかもしれません。

 

こういったことを置いておき、

「飼い主さん側からのアプローチで上手にコミュニケーションするなら?」

といった点からお話しするなら、何と言っても「獣医師・病院スタッフと遠慮せず話すこと」です。

 

動物病院側は、「飼い主さんはこういったことで悩むだろうな」「心配するだろうな」といったことを想定しながら会話します。

ざっくりとした言い方ではありますが、インフォームド・コンセントでも、こういった想定や、獣医師として飼い主さんに知っておいてほしいことを元に話がされます。

 

けれども、

● 飼い主さんが本当に心配していることは何か

● わんちゃんやねこちゃんのお家での様子はどうか

● 治療の効果をどう感じるか

といった「本当のところ」は、飼い主さんが話してくれないとわからないものです。

 

飼い主さんが実際に感じた不安や心配事、治療がうまくいっているように感じるか、それとも悪くなっていると感じるかといったことを、遠慮せずに話してもらうことで、獣医師を含めた動物病院側も、動物のための次の1手が打てるようになります。


診察の結果、自分や愛犬・愛猫にとって納得のいくものにできるかどうかは、飼い主さんと獣医師・病院スタッフの会話から最初の1歩が始まるということを、ぜひ意識しておきましょう。

 

獣医師やその動物病院と合わなかった…と悩んでいる飼い主さんの多くは、この本当のところを伝える時に、「話しづらかった」「話したけど伝わらなかった」と感じた人も多いようです。

そこで、病院側からの伝え方が大事であることは大前提として、飼い主さん側からの伝え方のコツもお伝えしておきます。

ぜひこれから来院する時には、チェックしてみてくださいね。

 

愛犬・愛猫の体調が悪い時の伝え方

獣医さんと濃密に接することになる愛犬や愛猫の体調不良時に、事実や自分の意見をスムーズに伝えるためには、次のような部分をぜひ意識して話してみましょう。

 

【なぜ来院したのか】

動物病院での会話で最も大事なことは、何のために来院したのかを伝え、動物病院側にもそれを理解した上で対応してもらうこと。

 

● ワクチンなどの予防医療のため

● 誤食や突発的なケガなどの緊急事態のため

● 持病の継続診察や悪化のため

 

この時のポイントは、緊急事態や病気の悪化で心配な時ほど、遠慮せずに受付スタッフにまず状況を伝えることです。

 

動物たちは話すことができないため、日常のささいな変化は飼い主さんのお話によってはじめて気づくことができるケースも多いもの。

「今日はどうされましたか?」と聞いた時に、飼い主さんからの申告が足りなければ、受付スタッフや獣医師はいつも通り待合室で待ってもらおうと捉えてしまいます。

 

呼吸が荒い、誤食した、じっとして動けない、出血しているといった場合には、状況に応じて診察の順番を前後してその子を診るべきシーンもあります。

わんちゃんやねこちゃんの様子がおかしいな…と思う時には、まずは遠慮なく「こんな理由で来院しました」と積極的に伝えていただくと良いでしょう。

 

【時系列の整理】

動物病院という非日常の空間にやってくると、飼い主さんは伝えよう!と事前に思っていたことをついつい忘れてしまいがちです。

 

そのため、会話の中で「あ!そういえば…」を繰り返してしまい、今日のことを話していたと思ったら、昨日や2~3日前、果ては1週間以上前のことまで、時系列をあっちこっちに飛ばして思い出したまま獣医師に伝えてしまいます。

(自分のことを言っているようでグサッときますが…)

 

会話の中の時系列がぐちゃぐちゃで、わんちゃん・ねこちゃんの体調の変化がうまく理解できないと、動物病院側も「ん?結局いつから体調が悪かったんだ?」とよくわからないという事態に陥ります。

 

状況によっては勘違いが発生し、そこから飼い主さんの「なんで話したのに覚えてないの?」という疑惑や不信感につながることもあるので、双方が注意したい部分でもあります。

 

体調が変化してから来院までに時間があれば、

● スマホや手帳に動物の体調変化をメモしておく

● 診察前の待合室で話したいことをイメージしておく

ことで自分の心を落ち着け、動物の変化に関わる会話がスムーズになることもありますよ。

 

【動物の体調がどう悪いのか】

 

動物の体調が悪い時には、「うちの子が辛そうだ…」ということを伝えたいものですね。

ここでポイントになるのは、獣医師がお家での様子を把握しやすいように、どのように体調を崩しているのかを分かりやすく伝えることです。

 

例えば、「下痢をしている」ことについて伝えたいとしましょう。

 

飼い主さんから聞く「下痢」という単語の中には、

● 1日に何回くらい出ているか

● いつから下痢が始まったのか(続いている期間は)

● 何かきっかけがあったか(ゴミ箱あさり、食べすぎなど)

● 便の形状はどんなものか(泥状、水様、血混じり、粘液混じり、ソフトクリーム状など)

● 色の変化はあったか(黒、茶色、焦げ茶色など)

● お腹が痛いポーズ、腹鳴(グルグル、ギュルギュル)はあるか

といったたくさんの情報を含んでいます。

 

そのため、ただ「下痢をしているんです」という伝え方よりも、

「昨日から泥っぽい下痢が始まり、今日からは水と粘液の便に変わったんです。回数も昨日は2回だったのが、今朝だけでも3回は出ている。お腹もゴロゴロと鳴りっぱなしで、今朝はご飯も残しました。」

といった言い方の方が、獣医師も飼い主さんが伝えたいこと、動物のことを把握しやすいのは一目瞭然です。

 

病院側が飼い主さんから情報を聞き出す話術も必要なのは間違いありませんが、飼い主さんがあらかじめ伝える準備をしておくことで、会話もスムーズになりますよ。

 

【家族で意見を統一しておく】

 

え?と思われるかもしれませんが、動物病院で飼い主さんから話を聞いていて困ってしまうのが、家族間で意見が一致しないことです。

 

これは治療方針などではなく、いつから体調が悪いとか、どんな症状が出ているかといった単純なことで意見が割れることを指します。

 

飼い主さんがお一人で来院している場合には、その人の主観のみで話が進むので、困ることはありません。

 

しかし、ご夫婦、親子といった複数人で来院している場合、

「昨日から体調が悪くて…」「いやいや、一昨日から悪かったよ」

「下痢と嘔吐が…」「え?えずいているだけで吐いてはないよね?」「あなたが見ていないところで吐いてたよ」

といったように、その場で意見や事実が食い違うという事態になることもよくあります。


笑い話のようで実はこのパターンはよくあり、獣医師や病院スタッフは意見が合うまで待つ…という何とも言えない時間が発生するのです。

 

病院スタッフが待つことは問題ないのですが、家族間でのケンカ(!)が勃発することもあるので、ぜひご家族の間で

● 誰がメインで獣医師と話すか

● 動物の正しい現在の体調はどんなものか

を、まとめておいていただけるとありがたいなあ…と思います(^^)