· 

冬に気をつけたい犬と猫の飲水量

冬になって寒くなると、夏場に比べて愛犬や愛猫の飲水量にも変化が訪れることはありませんか?

 

人の場合、夏に比べて汗をかく量も減り、湿度や気温が変化することで、体が欲する水分量が減っていきます。

また、脱水のリスクも大きく下がるのが寒い季節です。

 

わんちゃんやねこちゃんに当てはめてみても、暑さによってのどが渇くという場面が減るため、飲水量が少なくなるケースは多いもの。

ですが、できれば冬でも極端に飲水量を減らすことなく、キープしたい場面はたくさんあります。

 

今回は、わんちゃん・ねこちゃんの「水分」に注目してお話しします。

 

ー今日の目次ー

1.なぜ水分は必要なの?

2.愛犬や愛猫の飲水量が変化する理由

3.実際どれくらい飲んでいるの?飲水量の測り方

4.飲水量の減少によって冬に増える病気とは

5.愛犬や愛猫の飲水量を保つための工夫

 

なぜ水分は必要なの?

人や犬・猫では、体の約60%ほどを水分が占めているとされています。

細胞の1つ1つをしっかりと形作るため、血液としてなど、水分は体が健康であるために必要不可欠なものです。

 

栄養学の面においても、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素に続き、水を含めて6大栄養素と並び称されることもあるほどです。

 

体の中で水分が巡ることによって、

● 酸素

● 体に必要な栄養素

● 体に不要な老廃物

● 体を働かせるホルモン

などを、必要な臓器に必要な分だけ運搬できるわけです。

 

こういった運搬作業が滞ると体は死に至ります。

 

そのため、これらが滞ることがないように、体は必要な水分を取り込もうとしますが、時には過剰な・もしくは体にとって必要量に及ばない水分摂取量に陥る事態も発生します。

 

愛犬や愛猫の飲水量が変化する理由

体に必要な水分摂取量が増減する事態は、どんな時に起こるのかを見てみましょう。

愛犬や愛猫の水分量が気になっているという方は、次のようなものに当てはまっていないかぜひチェックしてみてくださいね。

 

【病的なものではない生理的な理由】

 

体にとって飲水量が必要以上・以下にならないように調節機能があるのは当たり前のこと。

 

体の生理的な範囲での水分摂取量の増減は、

● 食事の内容

● 気温や感情による体温変化の有無

などに左右されます。

 

ドライフードがメインで、食べるものにさほど水分量が含まれていない場合は体が求める水分量は多くなります。

対して、ウェットフードや手作り食をメインで食べている場合は、ドライフードに比べ水分量がかなり多いので、「うちの子、飲水量が少ない気がする…」と心配している人も多い印象です。

 

食事内容によって左右される分には、その水分量でわんちゃんやねこちゃんが満足していることも多いため、さほど心配する必要がないことも多いです。


また、気温の上昇や興奮によってハアハアとパンティング(口を開けて呼吸)すると、水分が口から蒸発していくため、特にわんちゃんは夏に体が求める水分量がぐっと多くなります。

 

【病的な理由】

 

生理的な範囲ではない水分摂取量の増減は、やはり体の不調からくることを考えておかなければいけません。

 

● 下痢

● 嘔吐

● 多飲多尿

● ストレス(心因性)

の症状を示す病気が体に起こっている時には、気温や興奮度に関わらず、目に見えて水分摂取量が変化することが予想できます。

 

嘔吐によって胃液が吐き出され続けても脱水になりますし、腸内で水分を吸収しきれず下痢になっても体から水分が不足してしまいます。

また、腎臓できちんと濃縮された尿が作り出せない時や、ホルモンバランスが調整できずにのどの渇きを訴えて水をがぶ飲みするパターンもあります。

 

多飲多尿を示す症状で有名なのは、

● 腎臓病(腎不全含む)

● 糖尿病

● 子宮蓄膿症

● 副腎皮質機能亢進症(クッシング)

● 副腎皮質機能低下症(アジソン)

で、24時間の飲水量をはかってみて、体重1㎏につき100mlを超えるほどの量を数日継続して飲んでいるのであれば、一度病院に相談してみてください。

 

ねこちゃんの場合は元々の飲水量が少ない傾向にあるため、わんちゃんの約半分、もしくは合計250mlを超えれば品種や体重に関わらず多飲とされています(ねこちゃんで250ml:500mlペットボトルの半分ってすごい飲水量です…)

 

心因性の飲水量増加は、検査をしても腎臓機能やホルモン分泌に関して異常がなく、体の機能は健康なのに引き起こされるものです。

極端な不安や緊張にさらされていたり、精神疾患を患っている場合には要注意です。

 

実際どれくらい飲んでいるの?飲水量の測り方

愛犬や愛猫が、普段どのくらい水分をとっているのかを観察している人はかなり少ないでしょう。

 

「なんだかたくさん飲んでいるかも?」と早く気づくためにも、「いつも通りの飲水量」がどのくらいなのかを把握しておくことはとても大切です。

そうすることで、何だかおかしいなと感じた時に量を比較すると、明らかな違いが分かるようになります。

 

はかり方はとても簡単で、以下の2パターンのどちらかを試してみてください。

 

500mlペットボトルや計量カップに水を入れ、そこから普段愛犬・愛猫が使っている器に水を入れる。

器に入れた分がなくなったら追加して、24時間後に残った量を確認。どれくらい減ったかをチェック。

 

愛犬・愛猫の器に、あらかじめ計量した水を入れる(普段より多めにしておくことがポイント)。

24時間後にペットボトルや計量カップに残りを戻し、減った量から愛犬・愛猫が飲んだ量を確認。

 

1日だけの飲水量チェックだと、生理的な範囲での増減もあるため、できれば3日程度継続してはかってみてください。

その上で、だいたいの平均値を探ってみることをおすすめします。

 

飲水量の減少によって冬に増える病気とは

冬の気温低下や活動量の低下によって、生理的な範囲でも水分摂取量が落ちてしまうと、尿が濃くなり、体から排出されるまでの時間が長くなりがちです。

 

そのため、動物病院では冬の風物詩のように、冬になるとわんちゃん・ねこちゃんの泌尿器系の病気が増える傾向にあります。

 

尿石症や膀胱炎を始め、できた石が尿道に詰まる尿路閉塞によって尿が体から出なくなり、緊急の閉塞解除処置を行うことも少なくありません。

尿が体から出ていかないと、老廃物が体内に溜まり続け、尿毒症と呼ばれる命に危険が及ぶ状態にさらされます。

 

泌尿器系の病気を防ぐには、冬でも飲水量を減らしすぎないように、わんちゃん・ねこちゃんが水を飲みたいと思える環境づくり・工夫をすることが大切です。

 

愛犬や愛猫の飲水量を保つための工夫

泌尿器の病気を繰り返しがちだったり、多飲多尿に関わる病気を抱えている子なら、飲水量をキープして寒い冬を乗り切りたいところです。

 

そのためには、

● 水飲み場所を複数個所設置する

● 冷たすぎないぬるめの水温にする(ぬるま湯をこまめに入れ替える)

● ドライフードにウェット製品や手作り食をトッピングする

● ドライフードをお湯でふやかし水分を含ませる

● 普段食べているフードにスープを混ぜる

といった方法を取り入れておきましょう。

 

治療に関わる療法食を食べている子で、食材やスープのトッピングが難しければ、冬の間だけそのシリーズのウェット製品を取り入れて、朝はドライ、夜はウェットと使い分けるのもありです。

 

また、老犬・老猫で、冬の寒さによって関節の痛みが発生し、「水飲み場まで行くのが辛い…」「面倒…」と諦めてしまっている可能性もあります。

その場合は、わんちゃんやねこちゃんが暮らす生活圏内を狭めて、水を飲むスペースを近くに置いてあげることを意識しましょう。

 

もしもお留守番中に飲水量のチェックもしてほしい!というご希望があれば、ドッグシッター・キャットシッターの事前カウンセリングやご予約の際にお気軽にお申し付けくださいね。